1960年代、東映の任侠映画は黄金期を迎え、任侠ブームを作った。
その人気の立役者が高倉健さん、鶴田浩二さんといった昭和を代表する映画スターだった。
『銀幕の神々』(山本甲士/著、小学館/刊)は、東映の任侠映画の名作が多数登場し、映画への愛情あふれる、任侠版『ニュー・シネマ・パラダイス』と言える書き下ろし小説だ。
主人公は文具メーカーの株式会社トドックの専務・岩瀬修、63歳。会社の近くのファミレスで、脚本家となった元社員と映画談議をしたことをきっかけに、中学生だった60年代、青春時代に夢中になった数々の任侠映画のことがよみがえる。
任侠映画との出会いは中学2年のときだった。友人に誘われ、商店街にある映画館で任侠映画を観た修は、高倉健に魅了されてしまう。店にある映画のただ券を手に入れるために、修は家業の酒店を手伝うようになり、周囲からはヤクザと煙たがられている中間のおっちゃんと親しく会話を交わすようになり、仲良くなっていった。
それからしばらくして、もうひとり、修の人生を変えた人物と出会う。従姉妹の弥生が引っ越してきたのだ。心臓が悪い弥生は近くの県立病院に入院していた。学校に通えない弥生のために、修はプリントなどを届けに行くようになる。弥生は、優秀で本好き、しかも絵を描くのが抜群に上手い。ケンカもしながら、二人は親しくなっていく。
任侠映画と、二人の出会いを経て、修は人生を歩む。そして、夢中になった任侠映画や人との出会いがあって、今の自分がいることを、切ないエピソードとともに修は感じるのだった。
若い世代の人たちは、高倉健さんというと『鉄道員』『あなたへ』といった最近の作品を思い浮かべるかもしれないが、本書では、1960年代の任侠映画に出演する若かりし頃の高倉健さんを知ることができる。
作中では『人生劇場 飛車角』『日本侠客伝』『網走番外地』といった東映任侠映画が登場。これを機に本書と合わせてDVDで任侠映画を観てみるのもいいかもしれない。そして、映画ファン、高倉健ファンには、懐かしく、たまらない小説となっているだろう。
(新刊JP編集部)
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