平社員時代は自分の成績だけ考えていればよかったものが、上司になると急に広い視野が求められて戸惑った経験はありませんか?
部下を育て、まとめ上げてチームとして結果を出さなければいけない「マネジャー」は大変な仕事。部下に仕事を振ることすら、最初はままならないかもしれません。
『任せきりでも10億円!週休5日社長の 任せる力』(すばる舎/刊)は、 仕事を上手に「任せる」ことで、部下の自発的な成長をうながし、チームとして大きな目標をに向かうための方法が明かされています。
今回は、著者の真藤昌瑳煕さんにインタビュー。デキる上司になるための秘訣をお聞きしました。その後編をお送りします。
―「任せる」を「丸投げ」することだと勘違いしている人も多いものです。仕事を「任せる」時のポイントと任せた後の距離感についてお話をうかがえればと思います。
真藤:僕は相手のタイプによって対応を変えています。直感で動くタイプ(「直感重視タイプ」)に対しては“丸投げ”以外は通用しません。彼らの一番のモチベーションは「すごい人だと思われたい」なので、努力を見られることや途中経過を見せるのを極端に嫌うんです。こういう人に仕事を任せる時は「これはすごい案件だからぜひやってくれ、お前ならできる」と丸投げしてしまうんです。そうするとものすごく頑張る。徹夜して仕上げてきたとしても、それを見破られないようにシャキッとした顔をして出勤してきます。
もう一つのタイプは、「人柄重視タイプ」といって、「誰のために仕事をするのか」を重視するタイプです。このタイプは途中経過とプロセスを共有することが大事なので“丸投げ”は絶対ダメ。一緒にやっている感覚を出してあげるのが大事ですね。
最後は「結果重視タイプ」で、このタイプの人は、与えられた仕事の意義や目的が腑に落ちると、自分でスケジュールを決めて進めていけます。彼らに対してやってはいけないのは、「ペースを崩すこと」です。仕事の要点や条件を明らかにして、求める結果と期限を決めたら、そこまではやらせるというのが重要になります。このタイプも、途中経過を細かく監視しないほうがいいです。
―今おっしゃった3つのタイプというのはどのように見分ければいいのでしょうか。
真藤:ある程度見た目や受け答えでわかります。たとえば、「直感重視タイプ」の人はとにかく荷物が少ない。仕事をしに来ていても、持ち物はノートパソコン一台とケーブルだけというのが珍しくありません。バッテリーが切れたらその時はその時、という考え方ですね。
「結果重視タイプ」は、「自分のノートパソコンは1日の使用時間は6時間で、ちゃんと持つように準備してありますから大丈夫です」と、明確な答えが返ってきます。もちろん予備のバッテリーも持っています。
準備するものが多すぎてやたらと大きい鞄を持ち歩いているのは「人柄重視タイプ」ですね。こういう人は何でもスペアがないと気が済まないから、どうしても荷物が多くなってしまうというわけです。
―何となくわかる気がします。
真藤:メールの書き方もタイプが出ますね。びっしりと文章で埋まっているようなメールは「人柄重視タイプ」です。箇条書きでポイントがまとめられているのが「結果重視タイプ」、「直感重視タイプ」はメールの文面自体が2、3行しかないというのが特徴です。
―部下のタイプを把握して、それぞれに合った仕事の任せ方や指導をするには、上司の方にもかなり経験が必要になるのではないでしょうか。
真藤:そうですね。ほとんどの上司の方は、上手に仕事を任せられるようになるよりも、「任せないで自分でやったほうが手っ取り早い」という考え方です。マネジメントや部下を育てることというのは優先順位が低い。本当は自分の仕事よりもそっちの方が優先なんだよということが、会社全体で共有されれば、上司の人の価値観も変わっていくんでしょうけどね。
それと、日本の場合はプレーイングマネージャーが多くて、マネジメントだけをやる人が少ないというのも、部下に仕事を任せられない原因になっていると思います。たとえば、営業部の課長で自分は営業に行かないという人はあまりいなくて、マネジャーでありながら自分も営業成績を残さないといけないという。
それもあって、特に中間管理職の人を中心に、「部下の育成まで手が回らない」という人は多いと思いますが、部下を育てて、彼らからの人望を集めることが自分の将来に繋がるんだというくらいの大きな視点を持って、自分の業務以外の部分に意識して時間を割くようにすると、少しずつ「任せる力」はついていくのではないかと思います。
―上司が仕事の仕方を変えて、これまで自分でやろうとしていたことを部下に任せるようになった時、ぶつかりやすい「壁」はありますか?
真藤:先ほどもお話したように、ほとんどの場合、自分の仕事を部下に任せてしまっても、問題は起こりませんし、案外うまく回ります。そこで、「自分は必要ないのかもしれない」という無価値感や「このままでは部下に追い抜かれてしまう」という不安など、メンタルの面で苦しくなってしまうことはあるかもしれません。
それと、日本は「汗水たらして働く」のが美徳というところがまだまだありますから、上司が仕事を部下に任せて早く帰ってしまったりすると、周りからやっかみが出ることもあります。でも、そうやって社内から批判や抵抗が出てくるというのは自分が上司としてレベルアップした証拠ですよ。仕事をしていないように見えてきちんと結果が出ているからこそ周りはやっかむわけで、うだつの上がらない管理職には誰も何も言いませんから。
―プレーヤーであれば自分の成績を上げるというのがモチベーションになったかと思いますが、上司としてマネジメントする立場になったらどのように目標を立てたり、モチベーションを保っていけばいいのでしょうか。
真藤:昇進して上司になるという人はだいたいプレーヤーとして優秀な人ですから、「自分の成績を上げる」というプレーヤーとしての楽しみをたくさん味わってきたと思うのですが、上司になったらその価値観のままではなくパラダイムシフトが必要です。
プレーヤーのうちは一個人ですから目標も小さいものでしたが、上司としてチームを動かすとなると、どんどん大きな目標を立てて、大きな仕事に取り組むことができます。それはそれで楽しいことだと思うので、夢や目標の持ち方といいますか、大きさを変えることが大事です。
―最後になりますが、上司として行き詰って悩んでいる方々に向けてメッセージをいただければと思います。
真藤:まずは「直感重視タイプ」「結果重視タイプ」「人柄重視タイプ」のうち、自分はどれなのか、また部下はどのタイプなのかを把握することから始めてみてください。それだけでも人間関係の悩みの大部分が解決してしまうかもしれません。
それと、部下の言い分に耳を傾けることですね。「仕事が遅い」「仕事ができない」といったことについて、ただ不満を持つのではなく「どうして遅いのか」「なぜできなかったのか」部下の言い分を聞いてあげる。そうすることで互いの理解が進んで信頼関係ができたり、仕事の任せ方がわかってきます。この二つはぜひやってみていただきたいですね。
(新刊JP編集部)
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