いくら頑張っても報われない、そう思って毎日を過ごしている人は少なくないはずです。
では、どうして幸せになることができないのでしょうか。
その答えが書かれているのが、望月俊孝さんが執筆した『幸せブーメランの法則』(大和出版/刊)です。
望月さんはリストラ宣告、借金6000万円などという危機的な状況から自身の行動を改善し、“人生のゴールデン・ルール”を実践することで成功を手にしました。その“ゴールデン・ルール”が「幸せブーメランの法則」として本書で紹介されています。
では、「幸せブーメランの法則」とはどのようなものなのか。お話をうかがいました。その前編をお伝えします。
(新刊JP編集部)
■借金、病気、会社からの解雇通知、そして愛する息子の入院…どん底から再起のきっかけになったことは?
――まず、新著『幸せブーメランの法則』を執筆した経緯からお聞かせください。
望月:この『幸せブーメランの法則』では、自分が誰かに与えた影響が自分にも返ってくるんだよということを伝えているのですが、実は僕がこの法則自体を知ったのはもう30年以上前のことになります。
――そんなに以前から知っていたのですね。
望月:ただ、本格的に実践しはじめたのは、22、23年くらい前です。そのときは自分のメンターから実践してみなさいと言われ、1年間、周囲の人たちに与え続けたのですが、まったく返ってこないんですよ(笑)与えるだけのまま体調を崩し、借金もどんどん膨らんでしまって、最終的には会社もクビになって、人生のどん底に陥りました。
でも、この法則は、どんな自己啓発書でも必ず書かれているもので、人生の黄金法則の3本指に入るくらい有名です。自分でも何かおかしいと思って、改めて周囲の人たちに聞いてみると、この法則について4つの勘違いをしていたことに気付いたんですね。「与えたものだけがかえってくる」「与えれば“すぐに”受け取れる」「与えたものは与えた人からかえってくる」「見かえりがないなら、与えても意味はない」という「4つの勘違い」がこの本のテーマとなっているんです。
――その「4つの勘違い」はこの本の最初で書かれていますよね。
望月:それがとても大事だからです。世の中、真面目に努力している人が多いけれど、謙遜してチャンスを逃してしまう人もいますよね。それが日本人の美徳なのかもしれないけれど、「受け取る」のがあまり上手じゃないなと思うことが多いんです。
特に与え続けてばかりでエネルギーがしぼんでしまう人を見ていると、20年前の自分と重なるんです。もしかしたら自分と同じように落とし穴にはまってしまっているんじゃないか、と。そんな人たちに向けて本を書こうとしたのがきっかけです。
――先ほど望月さんがおっしゃったように、「与えること」は様々な自己啓発書で定番として出てきますが、ここまで具体的に踏み込んで説明している本は多くありません。
望月:そうだと思います。僕自身はこの「幸せブーメラン」というタイトルが気にいっています(笑)多くの人は、1対1の関係の中でブーメランのようにかえってくると思っているのですが、実はそうではなくて巡りめぐって自分のところにかえってきます。30代の頃の僕にはそれが分からなくて、人生のどん底に落ちてしまったんですよね…。
――確かに「与えればすぐにかえってくる!」と思ってしまいますよね。
望月:それが、4つの勘違いの中の1つですね。自動販売機にお金を入れてボタンを押せば、すぐにジュースが出てくる。それくらい分かりやすければいいのですが、幸せブーメランの場合、ほとんどにタイムラグがあります。そして、それを待てない人が多いのも事実です。
――それはおそらく損得勘定で与えているからではないでしょうか。
望月:そうなんです。それも近視眼的な損得勘定ですよね。
幸せブーメランの法則は穀物や野菜と一緒で、種をまいてから収穫するまでに時間がかかります。「一粒万倍」という言葉をご存知でしょうか。これは一つの粒で万倍となって稲穂が実るという意味ですが、万倍になるまでには種を植えてから時間がかかりますよね。せっかちな人は稲穂になる前に刈ってしまったりするんです。
――ただ、与えていて何も反応がないと自分の気持ちとしてあまりよくないと思うんですね。
望月:かえってこないと思うときに実践してほしいやり方があります。それは、「お願いする」ということです。
――本書の中で「信頼を貯蓄する銀行」という例でご紹介されている部分ですね。与えることは相手という銀行に信頼を預けているんだ、と。
望月:まさにそうです。だから、信頼の残高がたくさんあると思う人にお願いしてみてください。
でも、昔の僕のように「お願いするなんておこがましい」と思ってしまう人もいるかもしれません。僕はセルフイメージが低かったので、なかなか対等な関係を築くということができなかったんです。
信頼をたくさん与えた人は、必ず助けてくれます。あなたの目を見れば、「ここが勝負時」「一番苦しい時期にいる」ということを相手は分かってくれますから。
――本書の中で、望月さんはあるときを境に次々とすばらしいことが起こるようになったと書かれていらっしゃいましたが、それはどのようなことがきっかけだったのでしょうか。
望月:それがお願いしたときなんですよ!
――そうなのですか! では、そのとき、望月さんにどのような気持ちの変化が生まれたのですか?
望月:受け取ったときに、時間をかけてでもいいから、これを何倍にもして必ずおかえししようと思ったんです。一番苦しいときに助けてもらった恩人ですから、どんなことがあっても必ずおかえししようという気持ちになりますよね。これはどん底の中で受け取ることができたからこそ、気づいたことなのかもしれません。
――どん底から再起した方々の話を聞くと、「与えること」だけでなく「受け取ること」の重要性をちゃんと知っていますよね。
望月:ただ、そういう状況に陥る前に気づいていたほうがいいことだと思うので、この本を書かせていただいたんです。
一生懸命頑張ることは大事ですけれど、それで何か大切なことを忘れてしまうこともあります。普通、そういう状態に陥る前に何かしらのメッセージが本人に届いているはずなんですね。病気や交通事故などがそれに気づくきっかけになるのですが、僕の場合、それでも気づかないまま走り続けていたんです。自分を大事にできていなかったんですね。
このままじゃいけないということを気づかせてくれたのは、当時生まれて間もない自分の息子の入院です。神様が「この人間は自分を大事にできないから、この人間が最も大事だと思っているところに気づきを与えよう」としたんじゃないかと思います。
周囲にはたくさんの信頼できる人たち、自分が受け取りにくることを待っている人たちは与えていれば必ずいるんです。それに気づいていれば、どんなに底に落ちそうになってもポジティブさを失わずに済むじゃないですか。これは幸せに生きる上で、すごく重要なことだと思います。
(後編に続く)
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