カゼをひいた時や、体のどこかが痛む時、あるいはお腹を壊した時など、私たちは日々「薬」のお世話になっています。
しかし、ほとんどの人は薬のどの成分が体にどう作用するかといったところまでは知らず、薬局で処方されるがまま服用しているはず。これは実はとても危険なことなのです。
「副作用のない薬はない」などと言われるように、「薬」と「毒」は表裏一体であり、現在は薬として使われているものの中には、かつて毒として使われていたものもあります。こうした薬の二面性を知っておかないと、よかれと思って服用した薬の副作用で苦しむことになる可能性だってあるのです。
■「血液をサラサラする薬」を過剰摂取すると…
生活習慣病として知られる、脳卒中や心筋梗塞は、血管の中に血栓ができ、脳や心臓の血管を詰まらせてしまう病気です。これらの病気の治療に使われる「ワルファリン」は、血を固まりにくくして血栓ができないようにする薬なのですが、合成された当初はネズミを殺す「殺鼠剤」として使われてきました。
私たち生物は体のいたるところで内出血が起きています。通常は体に備わっている止血作用によって、その出血はすぐに止まるのですが、「ワルファリン」は血を固まりにくくしますから、摂取したネズミは内出血が止まらなくなって死んでしまうわけです。
これは人間も同様です。「ワルファリン」を過剰摂取すると、脳出血や消化管出血などを起こすリスクが高まります。この薬は特に有効域(血液中の薬物濃度が低すぎず、高すぎず、という域。低すぎると薬としての効果がなく、高すぎると副作用が出てしまう)が狭いため、服用量を厳密にコントロールしなければならないといいます。
■元は毒ガス!?「抗がん剤」の起源
ドイツで開発され、第一次世界大戦で使用された「マスタードガス」という毒ガスも、今は抗がん剤、つまり薬として使われています。
1943年、多量のマスタードガスが積まれた船が沈没し、多数の死傷者が出るという事故がありました。この時マスタードガスを浴びた死傷者には、白血球が減少しているという目立った特徴があったといいます。
白血球とがん細胞には共通点があり、それは「増殖速度が速い」というもの。それなら、マスタードガスを使えば白血球と同じく細胞増殖が速いがん細胞も殺せるのではないか、と考えられて開発されたのが、マスタードガスと似た構造を持つナイトロジェンマスタードという抗がん剤なのです。
ちなみに、正常な細胞はあまり増殖しません。しかし、髪の毛や生殖器細胞など、活発に分裂する細胞もあるため、「増殖速度が速い」細胞を叩く性質がある抗がん剤は、こうした細胞までも破壊してしまいます。これが、抗がん剤の副作用なのです。
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風邪薬や花粉症の薬など、普段何気なく服用している薬にも副作用はあり、飲み合わせによっては重大な事態を引き起こしてしまうこともあります。
本書には、そういった薬の知識が網羅されており、自分の健康を自分で守るために必須の一冊です。
(新刊JP編集部)
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