バスケットボールを通じて、高校生たちの人間的な成長と、友情を描いた松崎洋のベストセラー小説『走れ!T校バスケット部』シリーズの第9巻が4月26日に発売された。
この作品は、書籍として発売される前から原稿のコピーが200人以上に回し読みされ、高校や中学校などのバスケ部員の間で評判となった異色の作品。部員たちの家族や指導者の支持もあって人気に火がつき、シリーズ累計100万部を突破する大ベストセラーとなっている。
青春小説がここまでの人気を集めるのは異例。多くの読者をひきつけ続けるこの作品の魅力はどんなところにあるのだろうか。
今回は、大ヒットの発端となった第1巻のストーリーをおさらいしてみよう。
中学時代に輝かしい実績を残して、バスケットの名門である私立高校に進学した陽一だが、部内のいじめが原因で高校を中退し、都立T校に転入。もうバスケットをやるつもりはなかったが、クラスメイトに誘われるままにバスケ部の見学に行くと、胸の奥でくすぶっていたバスケットへの情熱に再び火がついてしまう。何よりも、名門校とは違い、T高校のバスケ部員がのびのびと、心からバスケットを楽しんでいるのが陽一には新鮮だった。
こうしてT校バスケ部に入部した陽一だが、彼らは弱小チーム。「先輩に一勝をプレゼントしよう」が目標になっているように、一度も試合に勝ったことがない彼らをサポートし、時には自ら先頭に立ってひっぱりながら、陽一は初勝利に向けて奮闘、仲間たちもそれに応えることで見事に初戦突破を果たす。
そして、先輩が引退し、陽一が新キャプテンとなってT高バスケ部はさらなる飛躍を目指す。
この作品がバスケ関係者の評判を呼んだのは、臨場感あふれるバスケットの描写もさることながら、それぞれに個性を持った選手たちがチームスポーツを通して信頼関係や友情を通わせていく様子を描きながらも、学生スポーツが抱えがちないじめや部内暴力などの問題にも正面から取り組んでいる点だろう。
今回発売された9巻でもこのテーマは一貫しており、T高を卒業して教師となった陽一の立場から、バスケットに打ち込む高校生たちが衝突しながらも友情を通わせていく姿を描いている。
子どもにすすめられて読んでみたら親がハマってしまったということも多いというこのシリーズ。手にとってみると、なぜこれほどまでに絶大な人気を集めているかがわかるはずだ。
(新刊JP編集部)
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