数年前から、外国資本による日本の水資源の買収が相次いでいることが話題になっているが、その事態はどんどん深刻化してきているという。
人口の爆発的増加による水不足や、環境汚染などの様々な要因から淡水や地下水への需要は増している。つまり今、水は「金になる木」になってきており、世界中が水源をめぐって競争を展開しているのだ。
その実態と、日本を取り巻く現状を『日本の地下水が危ない』(橋本淳司/著、幻冬舎/刊)から紹介しよう。
特に水資源確保に躍起になっているのが中国だ。
チベット高原の水資源を確保すべく、複数の国にまたがって流れる河川の上流にダムを建設して、周囲の国々と軋轢を起こしている。また、食料生産には水が欠かせないことから農地買収にも積極的で、すでにアフリカや南米で大規模な農地を自国のものにしている。その中国が日本の水源林にもその食指を伸ばしていると言われている。
また、日本の水源林を狙っているのは中国だけではない。中国と同様、水不足に苦しんでいるシンガポール資本による日本への投資も始まっているという。とあるシンガポール人投資家は「資産保有」を目的として群馬県嬬恋村の森林を購入したが、隣接地から湧き出す水について「湧出量の4分の1」を使用する権利が設定されており、周辺住民は疑いの目で見ているようだ。
こうしたことが起こる背景の一つには、日本の林業の低迷がある。日本の林地価格は2012年3月現在の価格で1平方メートルあたり47円。これはピークだった1983年の89円から約半分となる。また、小さな野球場サイズで単純換算すると1ヘクタール47万円ほどだ。
このような状況で、林業農家は苦悩しながら、なんとか先祖伝来の土地を守ろうとするのだが、その一方で、土地を相続したものの、思い入れがなかったり、林業に興味がない人もいる。そういう人にとって森林は、管理費用と税金だけがかかる重荷でしかない。
「土地を売るな、水を奪われるな」と言う人がいる一方で、「土地を売りたい」「水を売りたい」という人もいるのだ。
グローバル化が進むなかで、日本経済の活性化のために水資源を水不足に悩む国々に売るべきと考える代議士も多く、水資源をめぐる問題にはさまざまな思惑が交錯している。
今や地球規模で淡水の不足、汚染が起きており、企業は良質の地下水が出る世界中の水源を狙い、買い上げるためにし烈な競争を繰り広げているという。
本書では、日本の水問題について様々な著作を述べてきた橋本氏が、日本がこの水資源をめぐる問題に対してどのように取り組んでいるのか、そして今の課題について迫っている。
地下水を管理する法律はないなど、対策が求められている日本。貴重な資源をどう守っていくのか、その現状と課題がよく分かる一冊だ。
(新刊JP編集部)
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