まずは、まもなく開館の注目すべき2つの博物館から。ひとつは、エストニアの人々の生活や歴史を伝える「エストニア国立博物館」、10月1日オープンです。設計はパリを拠点とする3人の建築家、ダン・ドレル、リナ・ゴットメ、田根剛。激動の歴史を歩んできたエストニアという小さな国が満を持して開館する悲願の博物館を、彼らはどのように設計したのでしょうか。もうひとつは来る9月24日、ワシントンD.C.に開館する「国立アフリカン・アメリカン歴史文化博物館」。オープニングセレモニーに、バラク・オバマ大統領のテープカットが予定されていることでも話題になっています。こちらは、苦難の歴史を歩んできたアフリカ系アメリカ人の歴史・文化をテーマに、さまざまな展示を行います。人種問題を浮き彫りにする収蔵品のほか、ルイ・アームストロングのトランペットやジェームズ・ブラウンの衣装など、エンターテインメント史を語る上で欠かせないものまで、3万6000点以上のコレクションを誇ります。
建築家の創造力で、博物館が街に新風を吹き込んだ事例にも着目します。たとえば、レンゾ・ピアノ設計によるNYの新たなランドマーク「ホイットニー美術館」。ハドソン川に面した開放的な空間で、新たな風景と人の流れを生み出しました。坂茂が設計した「大分県立美術館」は、"出会いと五感のミュージアム"を標榜し、1階にガラス張りの巨大なアトリウム空間を実現。フランク・ゲーリーは、パリの森に鮮やかなガラスの帆船「フォンダシオンルイ・ヴィトン」を出現させ、新たなアート体験へと人々を誘います。藤森照信による、色とりどりのタイルに覆われた「多治見市モザイクタイルミュージアム」も必見です。一方で、ユニークな展示方法で来場者を惹きつける個性派ミュージアムも紹介します。アメリカ西海岸の「ザ・ブロード」は、収蔵庫まで来館者に見せてしまう空間を採用。イタリアの「プラダ財団-ミラノ」は、個性豊かな10の棟で多様なアートを取り上げています。
ほかにも、「ケベック国立美術館」や「テート・モダン スイッチ・ハウス」など、新館・分館・増築で進化するミュージアムや、SANAAの創作に迫るインタビュー、世界遺産に登録された「国立西洋美術館」を取材。国内および海外で今秋以降必見の展覧会・芸術祭情報も網羅した、盛りだくさんの「ミュージアム最新案内」です。きっと次に行くべきミュージアムが見つかります。