人材が入ってこない。
入ってきた人材が育たない。
中小企業に共通するのが、こんな人材の悩みだ。
そして、「うちは知名度も低いし、給料がいいわけでもないから」と半ばあきらめながらも毎年採用活動を続ける。「中小企業であるうちに人が入ってこないのは、うちが中小企業だからである」という理屈である。
なぜ、多くの中小企業は「人が採れない・定着しない」のでしょうか?
「大企業に比べて知名度がないから」「給料が安いから」。たしかにそれも理由ではあるでしょう。
しかし、採用数や定着率の低さの主たる理由はそこにあるわけではありません。実はもっと大きな原因があります。(『成功事例でわかる 小さな会社の「採用・育成・定着」の教科書』より)
組織・人事コンサルティングを手掛ける株式会社新経営サービスの大園羅文氏が執筆した『成功事例でわかる 小さな会社の「採用・育成・定着」の教科書』(日本実業出版社刊)は、中小企業が共通して抱える人材の悩みの真の原因に迫り、その解決方法を指南する。本書によると、中小企業の多くは、現状に合わない時代遅れの採用活動・定着施策を行っているという。知名度や給料の問題ではない。採用や育成などの施策が間違っているのである。
その間違いの一つが採用活動を「とりあえず、なんとなく」で始めてしまうこと。「求める人物像」が定まっておらず、採用活動のプランも責任の所在も不確かなまま採用活動を繰り返してしまう会社が少なくないのだ。
「とりあえず、なんとなく」の採用活動は、自社PRがおざなりになる弊害も生む。
採用媒体会社が作った求人原稿をそのまま掲載してしまったり、過去に作成した求人原稿を使いまわしたり、といったことである。
採用媒体の担当者は企業の強みや採用への熱意を言語化するプロだが、彼らに熱意を伝えるのは企業側の仕事。中小企業では総務人事部門の社員が通常業務と採用活動を掛け持ちすることが多いが、だからといって求職者に訴求するための自社PRが熱意を欠いたものになったり、使いまわしになったりすると、結局それは人材不足という結果になって企業にはね返ってくる。
また、採用した人材の定着率の悪さは、人材育成が「現場任せ」になりやすいことが原因となっていることが多い。新入社員をいつ、だれが、何を、どのように育成するのかについての方針が定まっていないため、育成自体が配属先の上司に一任されてしまうことがあるのだ。
結果として、指導が上手な上司の下に配属された新人は着実に成長し、活躍するが、そうでない上司の下についた新人は成長スピードが遅く、会社への不満を募らせて離職してしまうという結果になりやすい。採用した人材が会社に定着するかどうかが「上司ガチャ」次第になってしまうのは、やはり会社としては問題だろう。人材の育成には、やはり会社がかかわるべきなのだ。
◇
ここでとりあげた中小企業にありがちな採用活動や人材育成に心当たりがある人は少なくないはず。もし自分の会社が採用や育成で苦しんでいるのなら、本書を片手に自社のやり方を見直してみると、結果も好転していくはず。
採用も育成も、うまくいかないのは「中小企業だから」ではない。やり方次第では大企業と伍して戦える。本書はそんなことを教えてくれる一冊だ。
(新刊JP編集部)
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