デング熱やMERS(中東呼吸器症候群)など、海外から入ってくる感染症が問題になっている今、現役医師である岩橋秀喜さんの小説『マラリア日本上陸』は、もし日本にマラリアが入り込んだらどんな事態が起こりうるのかを教えてくれるという意味で注目の作品だ。
スピード感のある展開と医師ならではの説得力のあるストーリーテリングでも出色のこの作品はどのように執筆されたのか。今回は前回よりさらに具体的に『マラリア日本上陸』の内容について、岩橋さんにお話をうかがった。
――沖縄、セブ、名古屋、飛騨地方、横浜そして秋田県の山村とじつに多くの場面が出てきます。読んでいてまるでその地へ旅行してきたような気分になりすね。「映画を観ているようだった」という感想も寄せられているようですが。
岩橋:そうですね。実際に私が住んでいたり旅行に行ったりした場所です。その地で感じた実際の人情や地域性のようなものを大事にしました。地元の人たちの生き生きとした人間味を伝えることができたのではではないでしょうか?
――それから、登場人物も結構多いですね。モデルになった方もおられるのでしょうか?
岩橋:およそ90%は実際の人物をモデルにしています。読んでいて登場人物の顔が想像出来るように工夫しました。医学の知識、エコロジーの知識などかなり多くの知識を盛り込む必要がありましたので、どうしても多くの専門家に登場してもらわなければなりませんでした。
――個人的な興味で申し訳ありませんが、ハマダラ蚊を解剖するシーンがありましたね。実際に先生が体験されたことでしょうか?
岩橋:学生時代には顕微鏡と格闘した時期もありました。蚊を解剖したりしたことはありませんが、その当時の経験をもとにしました。
――全体の印象として、かなりスピード感のある小説だと感じました。新しい知識が豊富に盛り込まれているわりに「一気に読めた」という感想を持っています。
岩橋:極力、無駄な描写はしないように心がけました。伝えたいことはまだまだ沢山あったのですが、300ページというだいたいのボリュームに収まるように苦労しました。
――最後にこの小説のキーワードを教えて頂けますか?
岩橋:「風土病はその地の守り神でもある」でしょうか?
――そのキーワードの具体的な意味は本を読んでみれば解るということですか?
岩橋:そういうことになりますかね。グローバリゼーション、風土病、エコロジーが三つの糸です。そして全体を通じて伝えたかったのはヒューマニズムです。読み終わってそれを感じ取って頂ければ幸いです。
(新刊JP編集部)
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