最後の週にご紹介する本は、『The News Masters TOKYO』火曜日8時台のニュースマスター、楠木建(くすのき・けん)さんの最新刊『すべては「好き嫌い」から始まる』を、ご自身にご紹介いただいた。
当コラムは、ビジネスパーソンが「今、知りたい!」ニュースや情報を、広く・深く、そして楽しく「耳」に届けてくれる朝のラジオ番組
『The News Masters TOKYO』(文化放送 AM1134/FM91.6 月~金 午前7時―9時)で、とりあげた本を紹介する。番組では、毎週火曜日の午前8時25分ごろから本の紹介コーナーを放送中。
文藝春秋から3月29日に発売予定のこの本によると、「好き嫌い」と「良し悪し」は分けて考えるのだという。どちらも価値基準だが、「好き嫌い」とは「良し悪し」ではないもの。逆に「好き嫌い」ではないものを「良し悪し」と言う。どういう違いかと言うと、世の中で、多くの人達のコンセンサスが成立している「好き嫌い」の事を「良し悪し」と言っている。
皆が普遍的な基準を共有しているものを「良し悪し」と言い、例えば、「時間に遅れてはいけない」...これは「良し悪し」であり、「いいや、僕は遅刻が大好きだ!」と言っても許容されるはずがない。
一方、普遍性はないが個人にとって良いものを「好き嫌い」と言い、例えば、「うどんとそば、どちらが好きか」...これは「好き嫌い」であり、「何を言っているんだ、うどんでしょ!」と言う人はあまりいない。そうやって分類すると、世の中には、「良し悪し族」と「好き嫌い族」と2タイプがあるという。
なるべく物事を「良し悪し」の軸で事前にルールを設定し、あれが良いこれが悪い、こういう方が良い世の中になるという前提で考えたり行動したりしている人を「良し悪し族」と呼ぶ。
法律をはじめ、世の中の良し悪しはあるが、それぞれ好き嫌いが違うので、干渉するなという考え方。自分と違う好き嫌いの人がいても気持ちよく放置し、感心を持たない方が世の中うまくなると考えている人を「好き嫌い族」と呼ぶ。
楠木さんによると、どうも最近、「良し悪し族」が大きな顔をしているという。自分の考えや主張が正しいのか正しくないのかという事をいつも気にして、もともと「好き嫌い」の問題だったものを無理矢理「良し悪し」にすり替えてしまう。もっと「好き嫌い族」として生きた方がいいという。
「好き嫌い族」にとって何が良いのかというと、自分で考えるという点。何故、自分がこれを良いと思うのか。それこそ個人の好き嫌いなのだが、そういう考えをしなくなると、世の中にある出来合いの良し悪しの物差しが欲しくなり、何かある度に「間違っている!」「だから日本は駄目なんだ!」という考え方になってしまう。それは人の「好き嫌い」なのだから放っておいた方がいいという。
物事を「良し悪し」よりも「好き嫌い」から始めてみてもいいかもしれない。「好き嫌い」は、自分だけの価値基準なのだから。