今回ご紹介する本は、オーディオブックの配信サービスなどを手掛ける株式会社オトバンク「新刊JP」編集長の金井元貴(かない・もとき)さんが、どうしてもおススメしたいという一冊、『文体練習』(レーモン・クノー著、朝比奈弘治訳/朝日出版社)。
当コラムは、ビジネスパーソンが「今、知りたい!」ニュースや情報を、広く・深く、そして楽しく「耳」に届けてくれる朝のラジオ番組『The News Masters TOKYO』(文化放送 AM1134/FM91.6 月~金 午前7時―9時)で、とりあげた本を紹介する。番組では、毎週火曜日の午前8時25分ごろから本の紹介コーナーを放送中。
『文体練習』は、実は70年以上前の1947年に出版され、世界中で今なお読まれ続けている本。複数の翻訳バージョンがあるが、今回は朝日出版社から出ている朝比奈弘治(あさひな・こうじ)さんのもの。当作品の著者は、映画にもなった『地下鉄のザジ』で有名な、フランス作家のレーモン・クノー。
かなり奇抜な内容で、「混み合ったバスの中で、ソフト帽をかぶった男性が、隣に立っている乗客と口論し、それから席に座る。その2時間後、今度はその男性が駅前の広場で、友人から身だしなみについてアドバイスをもらっている」という、基本となる短いストーリーを99の文体で書き分ける、という本。...ワケがわからない。スタジオの皆の頭の上にも「?」マークが出ていた。
どういうことなのか金井さんが説明をしてくれた。例えば、先程の基本となるストーリーを、男性の視点に立って主観的に書かれた文体もあれば、短歌にまとめてしまう文体、女子高生語で表現する文体、尋問形式といったものもあり、面白かったものではインチキ関西弁バージョンがあるそうだ。
...例えになっているのだろうか!? 番組パーソナリティのタケ小山氏も笑うしかない。
番組アシスタントの西川アナが、最も気になる「インチキ関西弁バージョン」を読み上げてくれた。
「インチキ関西弁バージョン」
「お昼頃やったかいなぁ、バスの後ろの方にデッキいうもんが付いてまっしゃろ。あっこに乗ってましたんや。ほたらあんた、アホな男はんがいはりますねん。若いのにごっつ長い首して。帽子には網紐のでけそこないみたいなもん巻いとんでおます」
...意味がわからない。
要は、一つのシチュエーションについて、さまざまな表現で書き分けているのだ。原文ではフランス人のイタリア訛りで書かれているが、翻訳者がそれはさすがに翻訳不可能だということで、日本語に当てはめたらどうなるか、と考えたら関西弁であったそうだ。
フランス人のイタリア訛りは、フランス語とイタリア語が混合していることから、このインチキ関西弁バージョンは、「東京人が関西弁を話したらこんな感じ」を想像で書いている。
確かに、たまにインチキ関西弁を出す東京人がいるなと、妙に納得してしまった。
『文体練習』とは、まさに文体の練習で、文章は「何を書くか」というよりは「どう書くか」が極めて重要。表現は一つではない。こう伝わらなかったら別の表現で伝えてみればいい。手法は一つだけではないので、色々な手法で考えてみて、人に伝えていく力を身に付けていくことを、この本は教えている。
伝え方はいくらでもある!是非この本で、表現方法や伝え方の発想を養ってみてほしい!
ゴルフ解説者のタケ小山さんがゴルフマネジメントで培った独自の視点でニュースを深堀りするラジオ番組「The News Masters TOKYO」と「BOOKウォッチ」 がコラボレーション。
ラジオ番組内コーナーの「トレンドマスターズTOKYO」(8:25~8:30)で毎週火曜日にお届けする本の話題を中心に、同僚や友人、家族に思わず話したくなる情報をコラム形式でお届けします。
「The News Masters TOKYO」(月)~(金)AM7:00~9:00
文化放送にて生放送!(AM1134/FM91.6/radiko.jp)
http://radiko.jp/#QRR