こんな光景、増えていませんか?
朝の9時。机について、定刻通りに業務を始めようとした新入社員に、上司が背後からこう声をかけた。
『うちの会社、来週から時差出勤になるんだよね。あなたは新人だから早い時間帯で勤務してほしいんだ。定時が1時間前倒しになるのと、新人はフロア全体の朝掃除が義務だから、余裕をもって7時過ぎには会社に来てね。』
新入社員の家は会社からドアtoドアで約45分のところにある。家を出るのが6時半だとしても、いったい何時に起きることになるんだろう。進学の際に借りた奨学金の返還も始まるから、節約のために毎朝お弁当を作っていこうと思っていたのに......。内心げんなりしているけれど、上司相手に何も言えず、「わかりました」と返事をしてしまった。
変わっていく労働環境
これは実際によくある例だ。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行が、私たちの労働環境にもたらした影響は大きい。社会状況の変化により会社の業績悪化または繁忙があれば、売り上げや労働時間も今まで通りとはいかなくなる。仮に大打撃がなかったとしても、リモートワーク・時差出勤などの労働環境の変化はある程度避けられない。中にはそういった変化に追い詰められて、苦しんでいる人も大勢いる。
非常事態になんとか対応するので精一杯、というのが多くの会社の言い分かもしれない。しかし「非常事態だから」といって不当な命令や解雇が許されたり、ハラスメントがまかり通ったりするようなことは、あってはならないのである。
「非常事態だからこそ」
本書では、そういった雇用の法律問題を一問一答形式で検討する。労働問題の専門家である著者が、法的根拠と豊富な判例をもとに、61の事例を解説している。サブタイトルに「在宅勤務 賃金 休業 罹患 ハラスメント 安全配慮義務 労災 採用 退職金 解雇 雇止め」とあるように、扱うテーマは多岐にわたる。職場のことで悩んでいる働き手や、その相談先にあたる人たちにとって、有益な情報がきっと見つかるはずだ。
いま「非常事態だからこそ」働く人々の権利を守ることが必要とされている。いつか世界が落ち着きを取り戻すその時まで、健やかに働くためにも、ぜひ一度手に取ってみてほしい。
【目次】
Ⅰ 採用・労働契約とコロナ不況
Ⅱ コロナ禍での賃金と休業、退職金など
Ⅲ コロナ禍での労働時間・在宅勤務・休暇など
Ⅳ コロナ禍での安全配慮義務とハラスメント防止
Ⅴ コロナ禍でのメンタルヘルス・労災補償
Ⅵ コロナ不況と解雇・雇止めなど
Ⅶ コロナ時代のフリーランス・テレワーク・クラウドワーク
【設問抜粋】
Q Aさんの勤めている会社では、会社が休業措置をとったことに対して、休業補償の支払いを求めましたが、会社が資金に余裕がないといって、60%分の休業手当すら支払ってくれません。
Q 新型コロナウイルス感染症関連で、休む従業員が増えたために、ほかの従業員が長時間働かざるを得なくなった場合には、36協定上の特別条項の対象となるのでしょうか。
Q Aさんは新型コロナウイルスに感染してしまい、会社に報告したところ、上司から、 「うちの会社を営業停止している間の売上分について、全額を払え」と言われてしまいました。払わなければならないのでしょうか。
日本加除出版株式会社の記事です。加除式図書、戸籍、登記、住民基本台帳といった分野を中心に、実務書、専門六法、月刊誌などを扱う出版社です。新刊情報、実務情報などご案内いたします。
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