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〈コロナの憲法問題〉とは何か

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  • 書名 コロナの憲法学
  • 監修・編集・著者名大林 啓吾 編
  • 出版社名(株)弘文堂
  • 出版年月日2021年3月11日
  • 定価本体2,800円+税
  • 判型・ページ数四六判・並製・284ページ
  • ISBN9784335358715
  • CコードC3032
 WHOが新型コロナウイルス(COVID−19)のパンデミックを宣言してから約1年が経過し、その間、日本でも2回の緊急事態宣言を経験した。感染者数は2020年末から年初にかけて劇的な拡大局面を迎えたものの、その後いったん落ち着きを見せた。かと思えば、2021年3月現在では下げ止まりの感もあり、依然として不安な日々は続いている。日本でも接種が始まったワクチンの効果に期待が集まるものの、変異株の拡大もあり、「第4波」の可能性はなくなっていない。

 そこで国や自治体は、長期戦を覚悟で持続可能な感染症対策、および経済施策に取り組む必要があるが、こと感染症対策という分野においては、時に強制的措置をとることが避けられない。実は、そこでクローズアップされるのが、さまざまな〈憲法問題〉だ。これは、意外に聞こえるだろうか。

 説明しよう。たとえば〈緊急事態宣言を出すべきか〉、〈要請か、強制か〉といったことがしばしば話題に挙がる。緊急事態宣言が出されると、外出自粛や営業自粛といった要請は、移動の自由(一般的自由)、営業の自由といった、憲法が保障しているはずの基本的人権に関係してくるのは明らかだ。東京都が要請に従わなかった外食企業に命令措置を行なって反発が出ているのは、記憶に新しいところだろう。

 また、事態の推移によっては日本でも今後、臨時の医療施設を開設するための土地使用や医薬品等の特定物資の収用、いざとなれば強制的に使用や収用などの措置が行われる可能性がある。そうなれば、財産権などの基本的人権と衝突することは避けられない。

 さらに、リモートワークは目下急速に普及したが、それならば国会や裁判もいっそのことリモートにすべきではないだろうか――。そうした、従来の統治システムを大きく変えてしまう可能性のある提案が、真剣に議論されている。新型コロナウイルス対策は、基本的人権や国の統治のあり方にも変化をもたらす可能性があるのだ。

 このように、新型コロナウイルス対策を検討するためには、まず憲法問題をクリアすることが避けられない。そのためには、さまざまに異なる条件下でコロナと闘う各国の対応や経験、法制度が参考になるだろう。大林啓吾(編)『コロナの憲法学』は、各国の具体的コロナ対策や緊急事態宣言の検討、そしてコロナ対策に伴う人権や統治の問題の考察など、〈コロナと憲法〉を考えるための素材が満載の一冊だ。

 「強制型」のコロナ対策をとる国が多い中で「穏健型」で一定の結果を出した(もちろん今後はどうかわからない)日本だが、強制型の国の対策や議論を参考にすべき場合もあるだろう。また個人情報を縦横無尽に活用した中国の「超」強制型ともいえるやり方を見ると、民主主義や自由のあり方に思いを巡らさざるを得ない。スウェーデンなどの「放任型」対策のゆくえも注目される。こうした、『コロナの憲法学』で紹介される様々な議論やケースをもとに、日本の感染症対策の今後を考えてみるのもいいかもしれない。

【目次】
総論――コロナの憲法問題〔大林啓吾〕

第1部 コロナ対策の比較憲法的分析
(1)アメリカ――ロックダウンの憲法問題〔大林啓吾〕
(2)イタリア――政府の「法律」による権利制限〔芦田 淳〕
(3)韓国――5つのソーシャルディスタンス〔水島玲央〕
(4)香港――柔軟かつ迅速な施策〔松井博昭〕
【コラム】中国――徹底した強制型アプローチを支える自由と秩序の観念〔森脇 章〕
【コラム】スウェーデン――放任型アプローチの試み〔大林啓吾〕

第2部 緊急事態宣言の比較憲法的分析
(1)アメリカ――支援型の緊急事態宣言〔大林啓吾〕
(2)イタリア――行政への権限付与のための緊急事態宣言〔芦田 淳〕
(3)ドイツ――ワイマールの教訓と「緊急事態」の議会的統制〔石塚壮太郎〕
(4)フランス――新たな法律上の「緊急事態」の創設〔河嶋春菜〕
(5)ニュージーランド――予防国家の緊急事態法制〔大林啓吾〕
【コラム】中国――異質な「都市封鎖(封城)」の目的、手段、正当性〔森脇 章〕

第3部 コロナ禍の人権問題
(1)休業補償の憲法問題――憲法上「補償」は 義務づけられるのか〔山本真敬〕
(2)コロナ禍のデモ①[アメリカ]――コロナ禍における抗議活動は禁止されるべきなのか〔桧垣伸次〕
(3)コロナ禍のデモ②[イギリス]――規制は伝統的な憲法原理を侵害するものだったのか〔奈須祐治〕
(4)礼拝規制と信教の自由――買い物に出かけるのは認めるのに礼拝を禁止することは信教の自由を侵害するか〔大林啓吾〕
(5)教育を受ける権利への影響――憲法は「学校に通う権利」と「学校に通わずに教育を受ける権利」を保障しているか〔堀口悟郎〕
(6)大学の運営・教育に関する諸問題――大学における自治や学びは保障されているか〔安原陽平〕
(7)感染拡大防止とプライバシー保護――情報通信技術を 利用した感染拡大防止をどう制御するか〔山田哲史〕

第4部 コロナ禍の統治問題
(1)政治家と専門家の関係――政権は医学専門家に主導権を握られたのか〔岡山 裕〕
(2)リモート裁判――裁判の公開性はリモート手続によって確保されるのか〔岡野誠樹〕
(3)リモート国会――物理的な出席は憲法が求めるものなのか〔小林祐紀〕

まとめと展望〔大林啓吾〕

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