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アメリカの「分断」を読みとく鍵は、「犯罪」にある

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  • 書名 〈犯罪大国アメリカ〉のいま
  • サブタイトル分断する社会と銃・薬物・移民
  • 監修・編集・著者名西山 隆行 著
  • 出版社名(株)弘文堂
  • 出版年月日2021年3月22日
  • 定価本体2,800円+税
  • 判型・ページ数四六判・並製・252ページ
  • ISBN9784335460425
  • CコードC3031
 ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命も大切だ)。今のアメリカの「分断」状況を象徴するBLM運動は、ミネソタ州ミネアポリス近郊で2020年5月、アフリカ系のジョージ・フロイド氏が白人警察官によって頸部を膝で押さえつけられ呼吸ができず亡くなった事件に端を発し、いまや反警察の色彩さえ帯びつつある。苦しむ彼が叫んだ"I can't breathe"(息ができない)という言葉は、運動の合言葉となっており、これに対して反BLM運動も起こるなど、社会的分断は憎悪の応酬となりつつある――。

 警察にとっては、「犯罪」に対する日常的な取り締まり行為にすぎなかったかもしれない。だが、それがこのように国全体を揺り動かす状況をもたらす。このことは、日本では少し想像しづらいかもしれない。というのもアメリカでは、「犯罪」というものが我々の想像以上に政治的一大イシューとなっているのだ。選挙では「法と秩序」を取り戻すといったようなスローガンが繰り返され、実際に、犯罪関連支出も右肩上がりなのである。

 確かに、70年代ニューヨーク市の治安状況が劣悪だったのは有名であるし、今でもアメリカといえば、犯罪が横行する「犯罪大国」のイメージがつきまとう。では、それは単にアメリカが、警察が総力を上げても取り締まりきれないほどに犯罪者が跋扈している社会だからなのだろうか。否、アメリカ政治が専門の西山隆行・成蹊大学教授によれば、むしろ今日のアメリカでは犯罪は過去に比べて少なくなっているのだ。

 なぜ、このようなギャップが生じるのか。それには、アメリカの政治のあり方が深く関わっている。西山教授の近著『〈犯罪大国アメリカ〉のいま:分断する社会と銃・薬物・移民』(弘文堂、2021年)ではこのようにある。つまり、近年のアメリカで犯罪政策関連の支出が増えているのは、そうしたイシューを争点に据えることで保守層を動員しようとする政治家が存在するためである。そして逆も然り、犯罪政策はどうあるべきかをめぐる党派的対立が、アメリカ社会の政治的分断の原因ともなっている、という。

 同書にも記された具体例で説明しよう。トランプ前大統領は、こうした分断を積極的に利用して政治戦略を組み立てていた。BLM運動に対してトランプは、プロの無政府主義者、暴力集団、略奪者を中心とした極左集団やアンティファによる動きであると主張したが、ここでは人種的分断に、さらに「犯罪」の問題が結びつけられていることがわかる。そして、犯罪の多い都市部からの移住者が増加する郊外などでは、こうしたトランプ的な主張は、人々の不安な心情に強く訴える。

 まさにニワトリタマゴの状況であるが、「犯罪大国」というアメリカのイメージは、こうした政治と社会の関係によってもたらされているところが大きいのだ。ほかにも、規制を求める市民感情に反して一向に進まない銃規制問題、連邦の政策に反してでも不法移民に寛大な政策をとる「聖域都市」問題など、政党政治や連邦制といったアメリカの特殊事情から読み解くべき犯罪問題も多く、詳しくは西山教授の『〈犯罪大国アメリカ〉のいま』を参照してほしい。「犯罪大国」の実相を知ることで、「分断」の一端が見えてくるかもしれない。

【目次】
第一章 犯罪対策の強化
第二章 都市の犯罪抑止政策
第三章 銃規制
第四章 麻薬取り締まり
第五章 不法移民
第六章 聖域都市
終 章 警察改革と「犯罪大国」のゆくえ

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株式会社弘文堂

法律および人文・社会科学分野の書籍を発行しています。 とりわけ法律の分野では定評をいただいており、「弘文堂プレップ法学」など入門書から、 基本書として「法律学講座双書」「法律学講義シリーズ」、さらに論文集を多数出版し、 その出版活動は法律学全般を覆っています。最近では、「伊藤真シリーズ」 「新・論点講義シリーズ」「ケースブックシリーズ」「演習ノートシリーズ」 「判例ノートシリーズ」などを鋭意刊行中です。 人文・社会の領域では、下記の分野に意欲的に取り組んでいます。  1) 社会学、海外事情  2) 歴史学、人類学・民俗学、宗教学  3) 哲学・思想、精神医学・心理学  4) 経済・経営  5) 医療・介護・福祉  6) 資格試験

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