「私たちがマイノリティだというのが現実です。......自治区の中で80%以上が移民でない学校はありません。イギリス人でこの自治区に引っ越してくる人なんていませんよ。もはや、出ていくだけなんです。トイレに並んでいるときだって、話しかけた相手がイギリス人であることはまれなんですから」
「白人はいまやマイノリティですよ。......〔黒人に〕より大きな力が与えられることだってあるんですよ。なぜなら、彼らはより高い位置にいるから。だから彼らは、好きなようにやれるんです。僕の叔父は工場で働いているけど、そこでは報復を恐れて、誰も黒人に指示しようとはしません。経営者は数で圧倒されていて、勇気がないんです。......白人とは基準が違うんです。歴史の本では、白人はいつも黒人より上にいました。でも、僕らは世界を変えるために人種差別をやめました。それから100年も経つのに、彼らはもっと多くを要求するんです」
「この地区はロンドンのイーストエンド出身者ばかりだったんだ。......みんな愛想が良くてね。だから馴染むのも簡単だった。戦争が終わってから人々が大勢やってきて、隣近所の関係もよかった。今以上に共同体の意識があったんだ。それが2004年か2005年ごろから、違う文化が地域になだれ込んできた。ゴアズブルック地区の外国人はせいぜい5%くらいだった。それが今じゃ5、6割が外国人だ。そこまでの速い変化に住人はついていけない。たくさんのムスリムがやってきたし、アフリカ人も大挙してなだれ込んできた。彼らは地元コミュニティと交わろうともしない。彼らを迎え入れる環境も整っていないし、だから何もかもばらばらになってしまったんだ」例外的な経済成長を経験した戦後の「黄金時代」も束の間、オイルショックを挟んで工場の閉鎖が相次ぎ、「白人労働者」たちの多くはミドルクラスとしての力をすっかり失った。そこにグローバル化が追い打ちをかける。大量の移民が来て、地域が多様化する。政治腐敗と組合の形骸化も深刻だ。本書の膨大なインタビューとサーヴェイデータで明らかになるのは、そうした「ポスト・トラウマ都市」で彼らが、政治的、社会的、経済的な剥奪感に苛まれ、ノスタルジアに身をやつす姿だ。だが、ビジネス・ロビーや移民たちの顔色をうかがうばかりの左右既存政党は、彼らの「声」に耳を傾けることはなかった。
「お願いです、ここ最近なかったことですが、私たちの国と国民を第一にしてください。」(デーヴィッド・キャメロン首相(当時)への手紙で)
「僕はレイシストではないけれども、解決策は〔移民を〕追い出すことさ。」「アンダークラス」という言葉が囁かれ、〈分断〉がいよいよ社会に影を落としつつあるグローバル化時代の日本にとっても、本書の見立ては決して他人事ではないだろう。
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