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書名
見えない不祥事
- サブタイトル北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない
- 監修・編集・著者名小笠原淳
- 出版社名リーダーズノート出版
- 出版年月日2017年9月23日
- 定価本体1500円+税
- 判型・ページ数224
- ISBN9784903722733
- Cコード0031
記者にも、いろいろなタイプがある。
格闘家のように闘う者、社会運動家のように正義を唱える者、評論家のように解説する者、学者のように分析する者、職人のように紡ぐ者。
『見えない不祥事』ー北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならないー、を執筆した小笠原淳の場合は、「物腰柔らかでユニークで、風変わりな」といった形容がよく似合う職人気質だ。
その人柄は文章にもよく表われている。
『警察官のわいせつ事件や傷害事件、暴行、万引き、ひき逃げなどは、いずれも報道発表されなかった。公文書開示請求で入手した記録では、彼らの氏名や年齢や性別が墨塗りされていた。事件の詳細は、2行ほどの記録に留まっていた』
自己の主張や感情を抑え、淡々と事実を書き連ねる。それゆえに読者の気持ちは高ぶっていく。
『2017年8月現在、北海道では道職員の「懲戒処分」を原則全件公表しているが、警察職員のみは唯一それを逃れ、多くのケースを封印することが許されている』
読み手の疑問は深まっていく。
不祥事が絶えず、謝罪を繰り返してきた北海道警察(以下、道警)。しかし、発表され報道されてきたものはごく一部だという。なぜ道警だけ不祥事を封印することが許されているのか? 警察官が、万引きをしている、ひき逃げをしている。その者たちは犯罪を犯しても個人情報が守られ、報道もされず社会制裁を受けることもなく、ときに軽い処分で警察官に復帰する。一方で一般人はどうだ? 万引き一つでも会社はクビになる。まして「ひき逃げ」など言語道断だろう。それがニュースで報じられれば一生の笑い者だ。警察官でありながら万引きをするような人物の名前を伏せる必要がどこにあろう? 警察官だからこそ、厳しく報じられるべきではないのか?ましてそういう犯罪者に警察官を続けていく資格があるのか。大丈夫か、日本の警察。
などとは、小笠原は決して書かない。
未発表の非違事案が年間100件を超えているという衝撃の事実に、小笠原は決して激高しない。それを「唖然」と形容し、口を開けて驚いてみせるのみである。持って行き場のない怒りを抱くべきは、読み手なのだということを、小笠原はよく知っている。
小笠原は、本書の冒頭に、こう書いている。
『日常的に事件・事故の容疑者や被害者の個人情報を発信している役所が、自分たちの不祥事に限っては頑なに発表を拒み続けているのだ』
『本書の目的は、その事実を知らしめることにある』
本文敬称略
文責/木村浩一郎
リーダーズノート出版
『どこかに「毒」がなくてはつまらない。どこかに「蜜」がなくては諭しめない。どこかに「骨」がなくては意味がない』それらを自らのレーゾンデートルと位置付け、精力的に出版活動を行っている出版社。
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