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オバマのアメリカはどこへ行く?

 ロムニーに遅れをとっていたこともあったオバマ。一時は共和党へ政権交代かと思われた。しかし、拮抗する支持率も、最後はハリケーンの一撃とともに、オバマ有利へと傾いた。本書のあとがきにあるように、ハリケーンが直撃したアメリカ東部ニュージャージーの州知事クリス・クリスティは、共和党右派であるにもかかわらず、選挙運動を中断して駆けつけたオバマに「エクセレントなリーダーシップを発揮している」と賞賛したのである。

オバマの1期目はまさに「伝説」のスタートだった。アメリカで初めての黒人大統領であり、声高に「チェンジ」や「Yes, we can」を繰り返して、新しいアメリカの創造がスタートすると国民は熱狂した。しかし異例ずくめの熱狂で迎えられた大統領への期待は、徐々に失望へと変わっていく。

アフガン問題が収束していない中で、ノーベル平和賞が舞い込んできた違和感(その後ビンラディンを殺害)。景気が一向に回復せずに中間選挙では共和党に過半数を握られてしまった沈滞。医療保険改革の頓挫。グリーンエコノミーの停滞。そして財政赤字の問題。そこへ降って湧いたように身内から出た「シンプソン・ボウルズ報告」。思い切った財政緊縮への提言が政界を揺さぶる。結果的には、この報告にもとづく政策は実施されなかったが、のちのちまで、財政再建問題の論議に登場する亡霊のような存在となって、オバマにたちはだかることになる。

オバマの「チェンジ」が色あせるにつれ、共和党ティーパーティが怪気炎を上げ、反オバマの世論を形成していったわけだが、それに追い討ちをかけるように景気停滞が、さらなる格差や貧困を生んで、ウォール街占拠デモまで起こった。外交に目を移せば、アラブの春での対応に疑問が残る。

冷泉氏は以上のようにオバマの1期目を俯瞰していく。そういえば、そんなことがあったなと思い出しただろうか。こうしてみるとオバマ政治は、決して「チェンジ」ではなく、停滞した様子ばかりが目につく。2期目を目指す選挙のスローガンが「チェンジ」ではなく、「フォワード」になり、明らかなトーンダウンとなったのは、なぜなのか。冷泉氏の透徹した目は、そこにも注がれた。2期目はどうなる?

 
 
 
 

書名:チェンジはどこへ消えたか オーラをなくしたオバマの試練
編者:冷泉彰彦
発売日:2012/11/24
定価:1,000円(税込)

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