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定年後格差をどうしのぐか、コツを伝授

ビンボーでも楽しい定年後

 テレビでおなじみの経済評論家、森永卓郎さん(独協大学教授)は、昨年(2017年)60歳になった。同級生らは一斉に定年を迎えた60歳を機会に、格差が一気に拡大したという。経済的にも見た目にもである。

 森永さんと同年生まれの評者もまったく同じ感想をもつ。同級生でも田舎の会社を継いだ者たちは経営者として現役だが、公務員は退職時のポストによって、その後の処遇もさまざま。東京で働いている者も同様だ。会社社長や役員、大学教授、医師らは羽振りもいいが、会社によっては収入が4分の1以下になった者も珍しくない。そして同窓会などに顔を出さなくなった人もちらほら。森永さんは自分の活躍の場を持っているか否かで決まるとして、経済的なアドバイスに加え、さまざまな生きがいの作り方を伝授したのが本書『ビンボーでも楽しい定年後』(中公新書ラクレ)だ。

 年金のマクロ経済スライドが実施され、今後25年間、毎年1.3%ずつ年金は減っていく。20年間で26%も減るのだから、年金生活者は節約するしかない。持ち家か賃貸かという永遠の論争についても「老後を迎える前に家を買っておいた方がいい」というのが結論だ。夫婦2人のモデルでは年金は23万円。ローンの終わった持ち家ならまるまる生活費に使えるが、賃貸だと家賃分だけ生活費が少なくなる。今後年金は減っていくから、生活費はますます少なくなり、生活は苦しくなる。森永さんは、場所によっては郊外の安い中古マンションは1000万円以下で買えると勧める。

 安倍政権での経済政策の結果、経済成長の成果は富裕層が独占、庶民の貧困化が進む。対抗するには一時的な節約ではなく、長続きする節約をするしかないという。例えば、家賃の安い郊外への移住、生命保険の見直し、外食をやめるなどだ。

 さらに節約術として、軽自動車、格安スマホ、ふるさと納税、セルフメディケーション税制、乗り物のシニア割引などを挙げている。森永さんは株主優待をフルに活用している。食品、外食産業、小売店、交通機関と驚くほどさまざまな株式を持ち、活用している。「自分の買い物に一番有利なところに株式投資をしてゆく」というのは発想の転換のようだが、現実的かもしれない。

生きがいを複数もつ

 小銭稼ぎの方法としては、インターネットオークションを勧めている。不用品に思わぬ値がつくことがあるそうだ。

 経済的な豊かさのほかに必要なのは生きがいだ。活躍の場は何でもいいが、複数持ち、できるだけ早く始めるように、と訴える。森永さんはコレクションで有名だ。空き缶やお菓子のおまけなど、金のかからないもの60種類12万点を集めている。埼玉県所沢市にB宝館という私設博物館までオープンさせた。まだ赤字だが意気軒昂だ。

 インターネットの動画投稿サイトを利用したパフォーマンス、風景写真などのストックのネット販売、田舎でのミニ農業など、森永さん自身が実践するものも紹介している。

 私立大学の定年までまだ余裕があり、さまざまなテレビ出演、原稿の執筆と忙しく収入の多い森永さんでも、さらに多くの生きがいを作ろうと努力している様に刺激を受けた。

 本書は具体的に企業名、商品名を挙げているので、類書よりは参考になるだろう。

 森永さんは「ビンボー」でも「定年後」でもないが、こうした備えが定年後を守ってくれるのだろう。   

  • 書名 ビンボーでも楽しい定年後
  • 監修・編集・著者名森永卓郎 著
  • 出版社名中央公論新社
  • 出版年月日2018年10月10日
  • 定価本体780円+税
  • 判型・ページ数新書判・185ページ
  • ISBN9784121506320

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